2023年4月19日リリースされたHi-STANDARDのデジタル音源限定の「I’M A RAT」。
同バンドのドラム恒岡章さんの訃報から約2ヶ月、Hi-STANDARD3人で収録された音源としては最後の作品となった。
Hi-STANDARDの新音源がリリースされてファンにとっては嬉しい感情とともに複雑な感情だった。
1991年のデビューから常にロックシーンの生きる伝説だったHi-STANDARD。
その伝説のメンバー3人の1人がメンバーから欠けてしまうという訃報の直後だったからだ。
「I’M A RAT」はCDのリリースはなく、デジタル音源限定で1曲のみのリリースになった。
MVも発表されたが、ジャケットイラストを背景に英訳・和訳が流れるシンプルなものだ。
「I’M A RAT」は曲名も歌詞もシンプルにつくられている。
「オレはネズミだ」というフレーズに合わせて、まるで自分たちをネズミに投影したかのような主張が連続されていく。
繰り返される「I’M A RAT」のフレーズが聞いてて気持ちいい。
そして最後の繰り返しの部分では、スローダウンしたテンポに合わせた「I’M A RAT」の言葉は、なんだかとても感傷的で少しせつなく悲しい気分になる。
Hi-STANDARDにポールポジションはいらなかった
歌詞を一部抜粋して和訳をみてみる。
印象的だったのは、「オレはネズミ、人類の作ったレースに参加しない」という歌詞のところ。
Cus I’m a rat
Who won’t race your human races
I don’t want the pole position
I won’t live a competitionI’m a rat
I’M A RAT / Hi-STANDARD
Who figured out how to win without anybody losing
Or at least not ever knowin’
They were beaten’
Cus I’m a rat
オレはネズミ
お前ら人類の作ったレースには参加しない
ポールポジションなんかいらない
競争にも参加しないオレはネズミ
I’M A RAT / Hi-STANDARD
誰にも負けないように勝つ方法を見つけた
気づかれないようにね
少なくとも彼らが負けたことを
だってオレはネズミだから
ポールポジションとは、クルマのレースで予選1位の車がスタートする地点のことだ。
予選を1位だったクルマは有利なポジションを用意される。
ネズミにとっては、そんな有利なポジションなんていらないし、そもそも「お前らのレースになんか参加しねぇよ」と歌っている。
このネズミをHi-STANDARDと重ねて考えてしまう。
1999年にはインディーズバンドとしては異例のミリオンセラーを達成したバンドHi-STANDARD。ただ、彼らにとってはそんなレースなんかどうだってよかったのかもしれない。
この曲の最後はこんなフレーズでしめられている。
I’m a rat
I’M A RAT / Hi-STANDARD
I’m a rat
I’m a rat
I’m a rat
And I put myself in that trap
And I’m happy about that
オレはネズミ
I’M A RAT / Hi-STANDARD
オレはネズミ
オレはネズミ
オレはネズミ
そしてオレは自分から罠にかかった
でもそれで幸せ
キラキラした世界でなくても、自分らしく生きることを選んだHi-STANDARD。
そしてそれにも関わらず音楽の歴史に残るような記録・記憶を残してくれたHi-STANDARD。
訃報の直後にリリースされた「I’M A RAT 」だったが、
この曲を聞いて、「でもそれでも幸せ」、そう思えた1曲だった。