Hi-STANDARDの「The Gift」は同バンドが18年ぶりにリリースしたフルアルバム。
ハイスタの愛称で日本のパンクシーンを牽引したHi-STANDARD、2000年のAir Jam(フェス)を最後に活動休止していました。伝説のバンドですね。そんなハイスタが活動を再開してニューアルバムを2017年にリリースしたわけです。
リリースだけで特設サイトができてますからね。
アルバムも最高なんだけど、ハイスタの活動再開は感動したね。中学生のころに「Air Jam2000」の映像でハイスタを知って、その時にはすでに活動休止していたから。この活動再開&新譜リリースを喜ぶファンは多かったでしょう。
曲は全曲英詩です。このへんは昔から同じですね。まず全曲英詩で歌うっていうのが当時は斬新で、海外ツアーまで実現して、ギターのKenは自主レーベルの社長というバケモンバンド。
でも曲の英語はやさしい英語だしCDには日本訳もついているから高校生でも分かる表現も多いです。
1曲目のAll GenerationsはMVも作られているからそっちをみた方が良いね。こうゆうただ曲を演奏しているだけのMVで絵になるのがさすがです。MV見てたら好きになった曲です。
おすすめなのは和訳をしっかり読むこと。頭から少し抜粋すると、
「ボーイズはどこに行った? オマエら今夜準備はいいか オレたちロックすっから しっかりタイトでいろよな またオレたちがヤルぜ ついに時は来た 満足してるワケねーよな? 教えてくれよ、一体誰がタイトなんだよ」
うん、ほんとに意味がわかりづらい、ハイスタとかKen YokoyamaとかBBQ CHICKENSとかの和訳は全部こんな感じだ。でもこれが好きなんだよね。「おれたちは好き勝手に好きなように表現するから、聞き手のみんなも思うように解釈して勝手に楽しんでくれ」っていうメッセージだね。
一番意味がとれないのが「タイト」っていう表現だ、試しに調べてみるとなかなかしっくりくるものが出てこない。曲のなかでは「Can you hold on tight」と表現されているから「hold on tight」で調べてみると、
ますますわからなくなってくる。これなら「おれたちロックするから しっかりつかまってろよ」くらいの和訳にならないとおかしい。スラングでもあるのかと調べるとヒット。
かっこいいねとかイケてるねって感じですね。だからもしもロック好きの友達とバンドの話をするときは「ああ、あのバンド最高にロックだよね、スーパータイトだよ。」みたいに話せばいいんじゃない。
そして短い曲だからすぐサビになるんだけど、サビの和訳は、
「オマエがどこから来ようと オマエの年が幾つだろうと オレには全く関係ない オレはステージの上では夢を見ないのさ だから思いっきり騒いでくれ オマエがどこに行こうとも オマエが過去にどんな人間であろうと オレには全く関係ない ステージにいるのは同じあの3人組 ここにいるのは 全ての世代を超えたガキども」
このサビの和訳について書く上で、ハイスタの歴史について改めて遡ると、1991年デビュー・2000年活動休止・2011年活動再開・2016年新譜(シングル)リリース・2017年新譜(The Gift)リリース、ざっくりとこんな経緯がある。つまり活動休止から再開まで10年以上、新譜リリースには16年の歳月がかかっているワケです。
そんな経緯があってのニューアルバムの1曲目が「All Generations」でこのサビなわけですよ。全ての世代のファンに向けて「あの3人組が帰ってきたぞ」と。
サビは「I don’t care」からはじまるフレーズで連続しますね。「こまかいことはいいから、あの時と変わらないバンドを全ての世代のファンが楽しんでくれ」というメッセージです。I don’t careは「気にしないよ・興味がないよ」みたいな意味になる。
そして2曲目がアルバムタイトルにもなっている「The Gift」です。ギフトにはもちろんプレゼントみたいな意味もあるけど、「天から授かったプレゼント=才能」ということで才能という意味もある。この曲のなかでは後者の意味で使われている。この曲もMVがある。
曲中では才能という意味で表現されているが、10数年ぶりのニューアルバムはファンにとってはまさに「The Gift」と言う名のプレゼントだった。
他によかった曲は9曲目の「We’re All Grown Up」、直訳すれば「オレたちはみんな大人になってしまった」、あとは10曲目の「Punk Rock Is The Answer」、曲調はさみしげな感じ。
「自分のことは 自分で決めるのさ パンクロックが教えてくれた パンクロックこそが答えさ 生きていく上で 大事なことは全部 パンクロックが教えてくれた」
大事なことは全部パンクロックが教えてくれた、じゃあパンクロックって何?音楽的に言えば、ギター・ベース・ドラムが中心のバンド音楽で、スリーコード中心で、モッシュ・ダイブで楽しむみたいな?専門家ではないのでわかりません。
アナーキーとか「DIY」とかでてきますが、音楽性ではなく思想的なものを「Punk Rock Is The Answer」でも指していますね。「パンクに生き様を教わったぜ!」と。
こういう歌詞とか文化とか歴史とかを知ると、さらに面白くなってくる。バンドや音楽もさらにかっこよく見えてくる。昔からライブがめちゃくちゃ好きというよりは、中古CD屋をジロジロみたり歌詞カードを見ながらシコシコ調べて聞いている方が好きでした。多分音楽好きには2種類に分かれると思っていて、1種類目はライブが大好きでライブに熱狂できるタイプ、もう1種類はただただ一人で好きなCDを延々黙々と聞いてるのが好きなオタクタイプ。僕は完全に後者でディスクユニオンの店員さんも勝手に後者みたいな人が多いんだろうなと思ってます。
ハイスタが好きでパンクが好きになって、大学の専攻に英語を選んで、結果としてTOEIC990点までとった人は日本全国さがしても僕くらいだと思います。
話はそれましたが、音楽は様々な付随情報が入ることでよりおもしろくなる。(他のこともそうだと思うけど)で、パンクって結局なんなの?というかんじだが、「パンクって何?」という問いに「知らねえよ」と言えるのがパンクなんじゃない。
あとはボーナストラック以外での最後の曲になる「Free」
「Oh Oh Oh… I know nothing can’t stop you. Nothing is stopping me. Oh Oh Oh… I know no one can stop you. No one really can. Stay free.」
エモいMVです。「エモいって何?」と聞かれれば「知らねえよ」と答えますが。是非和訳全文を見てほしいです。内容としては、かつての友人に語りかけるようなもの。ちなみにハイスタの代表曲の一つに「Stay Gold」という曲があります。「ハイスタと言えば」で真っ先に挙がる曲だと思います。「輝き続けろ」と歌っていた彼らが十数年の時を経て「自由でいろよ」と歌っています。10数年前の全盛期の頃は、インディーズとしては異例のミリオンヒットの人気でしたから、その分メンバー間の摩擦や精神的負担も凄まじかったようです。それでも「輝き続けた」バンドが復活して、いろいろあって大変だったけど「自由に生きよう」と歌っているのです。かつての友人に語りかけるような曲の内容は、かつての自分たちに向けてのメッセージなのかもしれません。
あらためてかっこいいバンドです。是非聞いてみてください。