言わずと知れたメロディックパンク・メロディックハードコア界の主役的バンドHi-STANDARD、通称ハイスタの4thアルバム。
TVなどのメディアへの露出はなく、自主制作レーベル『PIZZA OF DEATH RECORDS』からリリースをし、異例のミリオンセラーとなり累計販売100万枚を超える伝説のアルバムとなっている。
ボーナストラック含む全20曲が46分に集約されている。ハイスタを代表するM6「Stay Gold」も収録されており、M11「Changes」はブラックサバスのカバー曲である。
ハイスタンダードは伝説のアルバムとなる『MAKING THE ROAD』をリリースした翌年2000年に活動休止をした、人気絶頂の中のまさかのストップだった。
活動休止の理由としてはギターの横山健が精神疾患を患ったことから休養を申し出たとなっている。
ハイスタンダードは2000年8月に開催された、彼らが主催である『AIR JAM2000』というフェスを最後に活動を止めた。この時のライブ映像はDVD化もされている。
『AIR JAM2000』の演奏の始まりは、ベースボーカルの難波からの「よっしゃこい」の一言から始める「Stay Gold」だった。
my life is a normal lifeworking day to day
no one knows my broken dream
I forgot it long ago
MAKING THE ROAD/Hi-STANDARD
この曲が特に人気のある理由の一つとして、歌詞のメッセージが心に響く部分である。
「なんの変哲もない働き詰めの生活、おれのやぶれた夢なんて誰も知らないし、おれもとうの昔に忘れてしまった。」
曲のタイトルでもあり何度も繰り返される”stay gold”は、「輝き続けろ」とか「輝きを失うな」というメッセージだろう。
この曲を聞くと、自身の境遇に歌詞を当てはめて、それでも「輝き続けろ」とエネルギーをもらっているファンは多いと思う。
そして、M12「Making The Road Blues」はアルバムのタイトルを含むことからも分かるように、アルバムのメッセージを代表している曲だろう。
この曲はハイスタとしては珍しく、メロディックな部分よりも、荒々しさが強調された攻撃的な曲だ。
そしてそれは歌詞の中にも感じられ、強い主張とも言えるメッセージが含まれている。
He is making the road as he goesWe follow behind
Brave
Cool
Lusty
Calm
Blazing trails
On the front line
MAKING THE ROAD/Hi-STANDARD
このアルバムの輸入盤のジャケット裏面には「道作る」と書かれている。ある男が進む道を切り拓いていく歌だ。
No one can ever knowHow hard it is for him to carry on his way
MAKING THE ROAD/Hi-STANDARD
「彼がいく道がどれだけ過酷かなんて誰も分からない」もいう一節がある。
シーンの主役として様々なプレッシャーと戦い続けてきたハイスタンダードと重ね合わせて聞いてしまう。
この曲ではコーラスの横山健がサビ以外の部分を歌い上げてるのも印象的である。
彼らのキャリアの中で経験した過酷さを難波・横山が2人で叫んでいるようだ。
ハイスタンダードは日本のメロディックパンク・メロディックハードコアのシーンを作り続けてきた指針のような存在だろう、彼らが作り進んできた「道」は、それを辿る他のバンドへ示すように光り輝くものだった。
しかし、それだけ大きなムーブメントを作り上げてきたからこそ、誰にも理解できない過酷さがあり、2000年に活動休止を余儀なくされたのだろう。
ハイスタンダードは2011年に活動を再開した。11年ぶりの開催となる『AIR JAM2011』のステージで彼らは再始動したのである。
再始動のきっかけは2011年3月11日の東日本大震災である。
横山はライブの中で「信じられないかもしれないけど、俺たち日本のために集まったんだよね。笑わないでくれよ、ほんとだよ。」と口にしている。
彼らにはミッションがあった、その実現のために一度は途絶えたように見えた道をまた進み始めた。
曲の冒頭で出てくる”trails”は道と訳されているが、意味合いとしては、何かが進んできたことでできた道・跡というニュアンスがある。
最前線で今もなお戦う彼らが作る”trails”は、やはり強く光り輝いているし、これからもずっと”stay gold”なんだと思う。